Archive for 2015.11.5


生誕100年 写真家・濱谷浩

2015.11.5/ テーマ: つれづれ

こんにちわ
piottです

2978

電車とバスを乗り継いで、世田谷美術館へ
そして濱谷浩展を拝見してきました

とてもよい展覧会でした

東京の風俗や銀座の街を撮影していた上野生まれのシティーボーイ濱谷浩が
仕事で行った東北の集落での人間のすがたに衝撃をうけて
どうしようもなく人間を見つめる事にのめり込んで行く過程が
手にとるようにわかる構成になっていました。

さりげない銀座の街角や夜景の写真と
雪深い東北の村に根を下ろし神のようなものと共存しながら生きる人達の写真

夜の都会に生きる人達の軽妙な会話が聞こえてきそうな生活と
腰まで泥の水田に浸かって稲を育て、豊作と無事を祈る生活

振り切れるような人間の極端を行き来しながら
人間を考え(しかもとても控えめな態度で)記録を取り続けた
濱谷浩の真摯な視線を追体験させてもらった時間でした

それがすべて同じ国にすむ人間という現実。

生前の濱谷先生とおつきあいがあったという方に聞いたのですが
ご本人は、とっても洒落のわかる粋な方だったとか。
余談ですが、濱谷氏ご本人も、役者のようないいお姿。
30年前の姿を会場のモニターで見る事ができましたが
いまこの世田谷砧公園でジョギングする人と見まごうような雰囲気。
姿がいいから、ソレ、というわけではありませんが
いい表現者は即ちいい現代人たらねばならぬ、という言葉を
思い出しました。
当時も、そして今も、ある意味で彼は「いい現代人」だからこそ
いまの私たちにも添うものを見せてくれる人なのだと。

亡くなって20年は、自分の写真をだしてはならぬ、と近親者に遺言したそうです。
求めがあれば、20年経った時に向こうから求めがあるはずだから、と。

いまその遺言通り死後20年、生誕100年目にして
生誕100年写真展が日本を巡回する運びになったということが
彼の揺るぎない信念そのとおりだったことを証明しています。

写真を見て優しい気持ちになった…とか一切そんな生易しい感情ではなく
背筋をすっと空気が通り抜けるようなものを見せつけられました。
あくまでもストイックに記録者に徹した彼は
やっぱり東京生まれの都会人だったからではないかしらと
思い返しながら夜、ここに記しておきます。

icon_cho

 

icon_anzu2015年9月19日~11月15日 世田谷美術館にて

 

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